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はじめに
システム開発担当の「ほうがん」です。
FileMaker Proで作成したファイル(カスタムApp)はPC単独でも使用出来ますが、このカスタムAppを複数人で共有し運用してこそFileMaker システムは真の力を発揮します。
カスタムAppを複数人で共有して使用する方法としては以下の3つがあります。
3,FileMaker Proのピアツーピア共有機能を使用してカスタムAppを共有
このうち、3のFileMaker Proのピアツーピア共有機能は5ユーザ迄の共有が可能ですが、FileMaker Proバージョン18以降はテスト目的でのみ利用可能になっていますので、その点もご注意ください。
FileMaker Proのピアツーピア共有機能
現在、3のピアツーピア共有機能をご利用の場合は早めに1,2へのご変更をご検討ください。3は例えれば無保険でブレーキもまともに動作しない車両で公道を運転している状態です。この状態で事故を起こしてしまった場合の悲惨さをご想像ください。
無保険車両での悲惨な事故にあたるのが、共有していたカスタムAppが突然壊れて、これまで何年何十年と貯めていたデータは読めなくなり、社内業務が全く出来なくなってしまいます。これが個人の住所録ぐらいなら諦められるかもしれませんが、業務でこれが起きてしまうと会社が傾いてしまう事さえあり得ます。本当に致命的です。
1,2ですと、共有ファイルを安全にバックアップする機能が基本機能として組み込まれていますし、動作安定性、データアクセスのパフォーマンスも3とは断然違います。
1,2の詳細ですが、以下の通りです。
1,FileMaker Serverは使用ライセンスとユーザ数を決め年間契約する事で利用する事が出来ます。ただしサーバー機は自社内やクラウドサーバーを自前で用意する必要があります。そのサーバー機へFileMaker Serverをインストールする事でカスタムAppを共有して複数人で使用する事が出来ます。自分でインストールを行い、機能をカスタマイズが出来るメリットもありますが、インストールや設定にはそれなりの知見が必要です。
2,FileMaker CloudはこのFileMaker Serverの機能を簡単に利用出来るようにしたクラウドサービスで、自前でサーバー機を用意したり、FileMaker Serverをインストールしたりといった準備を行うことなく、契約を済ませれば、完成された共有環境が提供され短時間でカスタムAppを共有してクラウドで利用する事が出来るようになります。
今回はこの2つについて説明いたします。
FileMaker ServerとFileMaker CloudとのカスタムApp共有まで
・FileMaker Serverの場合
弊社でもお客様にFileMaker Serverの設定サービスを行っていて、大まかに以下の流れでセッティングを行います。この作業はそれなりの時間が掛かりますし、設定費用もいただいています。
1,サーバー機を事前に購入(あるいはAWSなどのクラウドサーバーサービスを契約)
2,FileMaker Serverをライセンス契約し事前に購入
3,セキュリティ確保のためにSSL証明書を事前に購入
4,サーバー機のネットワーク設定(クラウドサービスの設定)
5,サーバー機にFileMaker Serverをインストールし、ファイルのバックアップ間隔他を設定
6,SSL証明書インストール
7,無停電電源装置の管理アプリをインストール
8,電源管理アプリに停電時の動作を設定
9,クライアント側のPC、MacにFileMaker Proをインストール
(必要に応じてiPad、iPhoneにFileMaker Goをインストール)
10, PC、Mac、iOSクライアント側にFileMaker Serverへの接続情報を設定
11, カスタムAppを共有設定後、FileMaker ProからFileMaker Serverにアップして共有
・FileMaker Cloudの場合
これがFileMaker Cloudとなるとだいたい以下のようになります。多少の知識は必要ですが、わずかな時間で目的のカスタムApp共有迄たどり着けます。
1,FileMaker Cloudライセンスを必要数購入
2,WEBブラウザで契約者ページに入り、利用する「ユーザを追加」
3,クライアント側のPC、MacにFileMaker Proをインストール
(必要に応じてiPad、iPhoneにFileMaker Goをインストール)
4,PC、Mac、iOSクライアント側に利用者のClaris IDとパスワードでログイン
5,カスタムAppを共有設定後、FileMaker ProからFileMaker Cloudにアップして共有
FileMaker Cloudサービス利用開始時には、既にSSL証明書はインストールされているので通信は暗号化されていて、さらにAWSが提供している最高レベルのセキュリティで守られ、ネット環境さえあれば世界中どこからでも安全にこの共有されたカスタムAppにアクセスする事が出来ます。また、20分おきのファイルの自動バックアップ、サービスの自動アップデートなどが提供されています。FileMaker Serverの設定難易度を100としたら、FileMaker Cloudは10以下といった感じでしょうか。
サーバー機(クラウドサービス)を購入するなどの初期費用やセッティングの手間が発生しない。サーバー機の故障や停電対策などの考慮が必要なくサーバー機自体の管理が必要ないのもメリットと言えます。
FileMaker Cloud の種類
このFileMaker Cloudですが、運用する規模、目的に合わせるためにFileMaker Cloud StandardとFileMaker Claud Essentialsという2つのサービス、料金体系が用意されています。
大雑把にいうとユーザ数とカスタムAppの利用数が判断基準で
・FileMaker Claud Essentials ユーザ数が10人まで、カスタムAppの共有は3つまでで良い場合
・FileMaker Cloud Standard それ以上のユーザ数、あるいはカスタムAppの共有が4つ以上必要な場合
と、こんなイメージです。表にまとめてみます。
| Essentials | Standard |
月額税抜(参考) | \2,150 | \4,400 |
年額税抜(年単位で支払) | ¥25,800 | \52,800 |
カスタムApp数(上限) | 3 | 125 |
ユーザ数 | 5-10※ | 5-250 |
含まれる製品(ホスト) | FileMaker Cloud | FileMaker Cloud |
含まれる製品(クライアント) | FileMaker Pro FileMaker Go FileMaker WebDirect | FileMaker Pro FileMaker Go FileMaker WebDirect |
利用できるストレージ | 年間2GB×ユーザ数 | 年間6GB×ユーザ数 |
※2025年1月現在、Essentialsは新規トライアルで3-4ユーザからの契約も可能となっています。
Standardと比べるとEssentialsは約半額で利用する事が出来ます。ユーザ単位の契約ですので、あるユーザがPCとiPadとiPhoneなど複数台で同時にカスタムAppにアクセスすることも可能です。機材も設定も環境ごと提供されて、この価格でカスタムAppの共有を手軽に安全に行う事が出来て、常に最新版のFileMakerバージョンを使用する事が出来ます。初期費用もいらないし、ハードの管理も必要なし、バックアップは自動的に20分おきに行われる、カスタムAppのクラウドでの共有利用のためには結構魅力的なサービスだと思います。
おわりに
弊社はClaris パートナーでリセラーでもありますので、今回ご紹介いたしましたFileMaker Server、FileMaker Cloudの販売、セッティング、導入支援、FileMaker Server、FileMaker Cloudへの移行作業代行も行っております。
作成者がいなくなった古いカスタムAppがあるけど最新版に変換して使いたい。自社内でFileMaker Serverで共有しているカスタムAppをクラウドで使いたいけど、どうすれば良いのかわからないなど、FileMakerに関する困りごと何でもご相談ください。